馬超「むむむ」、李恢「なにがむむむだ!」の元ネタ
(横山光輝 『三国志35 成都攻略戦』、潮出版社、1983年、178頁より)
2chを中心に流行ってる、横山三国志の馬超「むむむ」と李恢「何がむむむだ!」。
テンプレ化されて様々なバリエーションが出ていますが、
元ネタは実は吉川英治の『三国志』にあります。
横山三国志は、戦前に出版された吉川英治の小説『三国志』をベースにしたものです。
他にも横山漫画だと、戦国武将を主人公にした漫画も
元を辿れば山岡荘八などの小説がベースになっていたりします。
それは兎も角、吉川三国志の問題のシーンを引用してみましょう。
[李恢]「その曹操のため、敗れて漢中に奔り、張魯のため、よい道具につかわれたあげく、一族の楊松などに讒せられ、腹背に禍いをうけ、名もなき暴線をして、可惜、有為の身を意義もなく捨て果てようとは。・・・・・・さてさて、呆れた愚者。辱知らず。父の馬騰もあの世で哭いているだろう」 [馬超]「・・・・・・ううむ」 [李恢]「何が、ううむだ。思え、泉下の父の無念を。・・・・・・たとえ御身が玄徳に勝ったところで、歓ぶものは誰だか知っておるか。それは曹操ではないか」 [馬超]「賢士。目がさめた。ゆるしたまえ。ああ誤った」 馬超は、がばと、身をくずして、李恢のまえに哭き仆れた。 (吉川英治 『三国志(六)』 講談社、1989年、262頁より) |
一目瞭然ですが、ここが元ネタになっているのがわかりますね。
ただ、「ううむ」を「むむむ」にしたのは横山光輝の独創です。
横山三国志だと「げぇっ!」「ジャーンジャーンジャーン」と同じぐらい「むむむ」が出てくるので、
おそらく横山氏の好みの問題ではないでしょうか。
そう思って三国志の次に連載された『項羽と劉邦』を読み返したら、
「むむむ」の量が格段に減少していました。
もしかしたら、ご本人も気付いていたのかも。
もっとも結局のところ、真相は闇の中ですが。
むむむ。